【憲法改悪シリーズ全5話・第3話】「緊急事態条項という合法的独裁」— 国家があなたの“日常”を停止する日

第3回:
「緊急事態条項という合法的独裁」— 国家があなたの“日常”を停止する日
たとえば、こんな日が来たらどうしますか?
ある朝、テレビをつけると政府の会見。
「本日より、緊急事態条項を発動します」
その瞬間から、あなたの生活は、法律ではなく“政令”で動かされる。
議会は黙り、裁判所は何も言わず、
内閣総理大臣の一言で、すべてが決まる世界。
これは陰謀論ではありません。
自民党の憲法改正草案に書かれている“現実的な未来”です。
■ 緊急事態条項とは何か?
草案の第98条・99条に、「緊急事態宣言」についての記述があります。
要点はこうです。
● 内閣総理大臣が“緊急事態”を宣言できる
● 宣言中は、内閣が「法律と同じ効力を持つ政令」を発令できる
● 国民には“指示に従う義務”がある
● 地方自治体の長も、国の指示に従う
つまり、法律による統治が止まり、“命令”がすべてになる。
■ 「災害対策じゃないの?」という誤解
もちろん、表向きの理由は「大規模災害や有事への対応」です。
けれど、すでに災害基本法や感染症法など、必要な対応は法律で整備されています。
わざわざ憲法を変えてまで“非常時の独裁体制”を整える理由は、本当にそれだけでしょうか?
■ 一度発動されたら止まらない“例外”
歴史が教えるのは、「例外」は一度使われると“恒常化”するということ。
ナチス・ドイツのヒトラーも、緊急事態条項からすべてが始まりました。
最初は「国民を守るため」と言いながら、
最後には言論の自由も選挙も、命さえも“秩序のため”に奪われた。
■ 憲法は、“最悪のとき”にこそ本当の力を発揮する
人々が冷静なときに、憲法の大切さは見えづらい。
でも、本当に必要なのは「国家が暴走したとき」に歯止めになること。
緊急事態条項は、その歯止めを自ら外す条項です。
■ そして、国民には「従う義務」まで書かれている
現行憲法では、国民は「守られる存在」です。
しかし草案では、“従う義務”が明記されます。
つまり、
国民は守られる者から、服従する者へと変えられてしまう。
■ 静かに迫る“合法的独裁”
怖いのは、これが全部「合法」になるということ。
合法だからこそ、どんな手段であっても「正しい」とされてしまう。
そして、その法律をつくるのは、他ならぬ今の政権です。
■ だから私は思う
緊急事態条項を、憲法に入れてはいけない。
それは、独裁のスイッチ。
権力者に「好きなときに国家を乗っ取れる鍵」を渡すようなもの。
あなたがどれだけ真面目な善良でも、
あなたの子や孫がどれだけまっすぐでも、
この条項が発動すれば、そのすべては意味を失います。

口が上手い政治家に要注意!
次回は、第4回:
**「“家族”という名の国家装置 — 個人より制度が優先される社会」**へ進みます。